乳児湿疹とは
乳児(1歳未満)の時期に発症する湿疹を総称して乳児湿疹と言います。その中で最も代表的とされているのが、乳児脂漏性皮膚炎です。同湿疹が起きる原因ですが、乳児期は皮脂分泌が活発になるのですが、生後2~4週間の期間で皮脂腺が多いとされる頭部やおでこに紅斑や黄色っぽいかさぶたがみられ、次第にポロポロ落ちるようになります。かゆみなどの自覚症状は軽度にみられるという程度で、1歳を過ぎる頃には解消するようになります。治療については、脂漏部位(頭部、おでこ 等)を洗顔や洗髪によって清潔に保つほか、ステロイド外用薬を塗布するなどしていきます。
このほか、アトピー性皮膚炎も乳児のうちから発生するので、乳児湿疹のひとつに数えられます。さらに口周りの皮膚炎(よだれかぶれ:唾液や食物に含まれる成分が刺激となって起きるかぶれ)、食物アレルギー(食物がアレルゲンとなって発症するアレルギー症状)による湿疹というのもあります。
とびひ(伝染性膿痂疹)とは
医学用語では伝染性膿痂疹と呼ばれ、原因菌によって痂疲性膿痂疹、水疱性膿痂疹に分けられます。ここでは、乳幼児に多くみられる水疱性膿痂疹によるとびひについて説明します。
水疱性膿痂疹は、皮膚に常在する黄色ブドウ球菌が、切り傷やすり傷、アトピー性皮膚炎や虫刺され、あせもなどのかゆみの症状から作られた引っかき傷などから入り込んで感染し、それによって発生した薄い膜で覆われた透明な水疱のことを言います。顔や手足などでみられるようになりますが、かゆみが伴うので、多くは爪を立てて水疱をつぶすようになります。すると菌が付いた指先で体のあちこちを触るようになるので、水疱が瞬く間に全身に広がるようになります。その様子が火の粉から発生する火事にも似ていることから一般的には飛び火と言われるようになりました。
なお水疱が破れると赤くただれた皮膚の部分が露出し(びらん状態)、それがかさぶた化し、剥がれると治癒になります。その期間は1週間程度と言われています。
治療の中心は薬物療法です。抗菌薬の内服と軟膏を使用していきます。またかゆみの症状が強ければ抗ヒスタミン薬を使用していきます。またスキンケアとして、石鹸で洗い、シャワーで流すなど皮膚を清潔に保つことも大切です。
ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
医学用語では尋常性挫創という皮膚疾患になります。これは脂腺性毛包と呼ばれる毛穴で発生する慢性の炎症疾患になります。脂腺は、思春期から成人にかけて大きく発達し、その際に皮脂が多く分泌するなどして、毛穴(脂腺性毛包)を塞ぐようになって面皰(めんぽう)を形成していきます。するとこの面皰を栄養源にして、皮膚の常在菌でもあるアクネ桿菌が増殖し、炎症が発症するようになります。ちなみにニキビが発症しやすい部位は、脂腺性毛包が集中しているとされる、顔、胸、背中です。また思春期を過ぎた後も、ストレス、睡眠不足、ホルモンバランスが乱れるといったことでニキビが発生することもあります。これはいわゆる大人のニキビと呼ばれるものです。
なお面皰があっても炎症が起きていない状態を白ニキビや黒ニキビ(白ニキビの毛穴が開いている状態)と言い、炎症を起こしている状態を赤ニキビ、これがさらに悪化し膿の塊もみられている状態を黄ニキビと呼ぶこともあります。ちなみに黄ニキビの状態で、適切な治療をしないと炎症が治まった後にクレーターのような凸凹した痕が残るようになります。これを瘢痕と言いますが、このような状態になると治していくことが困難となりますので要注意です。
治療についてですが、炎症(赤ニキビ)や膿(黄ニキビ)がある場合は、抗菌薬の外用薬を使用していきます。症状がひどい場合は、抗菌薬の内服薬を用いるようにします。また発症しないための予防対策も大事で、普段から規則正しい生活に努める、1日2回程度の洗顔をする(過度にはしない)などのケアも怠らないようにしてください。
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)とは
一口にイボと言いましても様々な種類があるわけですが、一般的には目で確認するのが困難なくらいの皮膚にできた小さな傷からヒトパピローマウイルス(HPV)が侵入し、感染することで発生する尋常性疣贅(ウイルス性疣贅)を意味することが多いです。この場合、世代に関係なく発症しますが、なかでも子どもが発症しやすいと言われています。好発しやすい部位は、手足とされていますが、傷になりやすい部位(肘、膝、顔面、手指 など)でも起きやすくなります。単体の場合もあれば、複数個発生することもあります。
このイボというのは、直径1cm未満の場合が多く、自覚症状はありません。形状は円形が多いですが、それ以外も少なくないです。色については、灰黒色、茶褐色、明るい灰色など様々で、表面はザラザラした感触があります。またどうしても見た目が気になるので、イボを自らの手で除去したいと患部をいじるなどすれば、ウイルスを巻き散らして、イボを増やしてしまうこともあります。そのため処置したいのであれば、必ず皮膚科をご受診されるようにしてください。
イボは、そのまま放置でも命に影響することはありませんが、ウイルス性であれば、増やしてしまう可能性もあるので、除去による治療を行うことが多いです。この場合、最も一般的なのが液体窒素を用いた凍結療法です。マイナス196度の液体窒素をイボに押し当てるので、治療中や治療後に痛みを感じることがあります。この場合、1度の治療で切除できることはないので、1~2週間に1回の間隔で数ヵ月程度は通院することになります。このほか、ヨクイニンなど漢方薬を使用する薬物療法、炭酸ガスレーザーや執刀による切除(手術療法)が行われることもあります。
小児アトピー性皮膚炎とは
強いかゆみを伴う湿疹(発赤 など)が体の一部でみられ、良くなったり悪くなったりという状態が慢性的に起きるのがアトピー性皮膚炎です。
早ければ、生まれて間もない生後2~3ヵ月頃から発症することになりますが、乳児脂漏性湿疹など他の乳児湿疹と見分けがつかないことも少なくありません。ただこのような湿疹が生後半年で2カ月以上、半年以上の乳幼児で6ヵ月以上続いているとアトピー性皮膚炎と診断されます。
発症の原因は完全に特定したわけではないですが、アレルギーが起きやすい体質(家族を含め、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に罹患したことがある)であること、また皮膚バリア機能が低下しやすい方(ドライスキンになりやすい など)が発症しやすいと言われています。
よくみられる症状は年齢によって変わってきます。1歳未満までは、湿り気と赤みを帯びた湿疹が頭部や顔面を中心に肘や膝の内側のほか、腹部や背中あたりにもみられることがあります。また1歳を過ぎる頃になると顔面部での湿疹は減少し、首回りや肘や膝の内側で湿疹症状が現れることが多く、湿疹はカサカサとした乾燥状態になっていて、患部は黒ずむようになります。なお湿疹の症状というのは左右対称に現れやすいのも特徴のひとつです。
現時点では、完治させる方法というのはありません。ただこれまでは成長していくことで、治っていくとも言われていました。ただ最近は、成人を過ぎても症状が続くということも少なくありません。
そのため同疾患の治療というのは、皮膚症状を抑えるための対症療法となります。炎症など皮膚症状を抑える場合は、ステロイド系の外用薬やタクロリムス軟膏を使用していきます。また、かゆみの症状を強く訴えている場合は、抗ヒスタミン薬を併用することもあります。このほか皮膚バリア機能を高めるためのスキンケアも怠らないようにしてください。
虫刺され(虫刺症)とは
昆虫などの節足動物に含まれる毒物、あるいは咬まれる、触れるなどした際の分泌物によるアレルギー反応によって起きる様々な皮膚症状を総称して虫刺され(虫刺症)と言います。
一口に節足動物と言いましてもいろんな昆虫等がいるわけですが、主なものを挙げると、アブ、ハチ、蚊、マダニ、ノミ、疥癬虫、シラミ、毛虫といったもので、これらに刺される、咬まれるなどすることで、かゆみ、紅斑、腫れ、水疱、疼痛などの症状がみられるようになります。
なお虫刺されの中で、最も気をつけなければならないのは、ハチ(スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ など)に刺された場合です。発赤や強い痛みがみられるだけでなく、何度か刺されるとハチに含まれる毒成分に関するアレルギー反応というのがみられるようになります。これによってアナフィラキシーショックを起こし、生命に影響するということがあります。またマダニに刺されるとライム病というインフルエンザの様な症状(発熱、頭痛、関節痛、倦怠感 など)が現れ、さらに進行すると髄膜炎や顔面神経麻痺、心膜炎などがみられることもあります。
虫刺されによる皮膚症状の治療に関してですが、毒針が体内に入ったままの場合は、まずこれを除去するようにします。それほど症状が重くなければ、抗ヒスタミン薬の外用薬を使用していきます。また強いかゆみの症状があれば、ステロイド系の外用薬や抗アレルギー薬の内服薬が用いられます。このほか症状が重いという場合は、ステロイド薬の内服となります。
おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)とは
おむつをしている部分が赤くただれてしまっている状態がおむつかぶれです。原因は、尿や便が付着しているおむつを長時間当てていることで起きると言われています。尿や便には消化酵素が含まれているのですが、この刺激によって皮膚に炎症が起きると言われています。発症間もない頃は、おむつを当てている部分に発赤がみられる程度ですが、ひどい状態になると皮膚がただれ、血がにじむこともあります。
治療をする場合ですが、常におしり周りを清潔にし、おむつはこまめに替えるようにしてください。おしりを洗浄した後は水分をタオルなどしっかり拭きとって速やかに乾燥させます。症状が軽度であれば、これを繰り返すことで症状が治まるようになります。症状が強く出ている場合は医療機関を受診します。治療が必要な場合は、亜鉛華単軟膏による薬物療法となりますが、同軟膏では治りにくいということであれば、低用量のステロイド外用薬を使用します。
それでも改善傾向がみられないという場合は、おむつかぶれに皮膚のカンジダ感染症の可能性があります。同感染症であれば、ステロイド外用薬は症状を悪化させることになるので、1週間程度で効果がなければ、速やかに再受診されるようにしてください。
水いぼ(伝染性軟属腫)とは
伝染性軟属腫ウイルスに感染することで発症する光沢感があって中央にくぼみがあるいぼのことを水いぼと言います。大きさは数㎜程度で、主に夏の時期の小児に発症しやすく、摩擦が起きやすい腋の下や臀部、肘の内側などでみられることが多いです。かゆみなどの自覚症状はないとされていますが、アトピー性皮膚炎を併発しているとそのかゆみから掻き壊し、ウイルスの詰まった水いぼが破れると、体のあちこちに(ウイルスが)飛び散るなどして、様々な部位で発症させることもあります。
なお水いぼは、何の治療をしなかったとしても半年から1年の間に水いぼに対する免疫がつくなどして自然と治癒するようになります。ただその期間というのは、あまりにも長いので多くの患者様は除去する治療を行っていきます。
水いぼの治療では、特殊なピンセットを使って、ひとつずつ摘まんで潰すという方法がありますが、これは強い痛みが出るので麻酔テープを事前に使用して痛みを緩和させていきます。このほかにも液体窒素や漢方薬(ヨクイニン)による治療法もあります。
あざとは
黒あざ
一般的にホクロと呼ばれるものは、正式には色素性母斑とか、母斑細胞母斑と言われるものです。生まれついてホクロがある先天性の色素性母斑で、直径1.5cm以上20cm以下であれば黒あざ(中型色素母斑)、直径20cm以上であれば巨大型色素性母斑と分類されます。
この場合、成長と共に大きくなっていくのですが、中型や巨大型の場合は悪性化すること(悪性黒色腫 など)がありますので、そのリスクが高いと判断されると外科的切除による手術療法が行われます。また、小型あるいは中型のケースで悪性化のリスクが低いとなれば、基本は放置でもかまいませんが、美容的な観点から除去したいという場合は、保険適用はされず全額自己負担となります。
なお治療内容については、炭酸ガスレーザーによる除去か、外科的切除になります。
青あざ
青あざとしては、太田母斑や異所性蒙古斑が挙げられます。
太田母斑は、三叉神経付近にみられる青あざのことで、目の周囲や頬、前額、側頭部のどちらか片側でみられます。生まれてすぐにみられることもあれば、思春期や成人になってから発症することがあります。
これは、メラニンの色素異常によって発生するとされていますが、原因については特定されていません。見た目としては、境界がはっきりせず、ひらべったい、青色をはじめとする赤や褐色の斑点が現れるようになります。女性に多く見受けられ、外見上以外で何か問題があるということはありません。ただ放っておいても、自然と消えるということもありません。したがって、どうしても見た目が気になるという場合に治療となります。この場合、主にレーザー治療などをしていきます(何回か通院していただく必要があります)。
また異所性蒙古斑ですが、そもそも蒙古斑とは、生まれてからすぐに確認することができる臀部や腰部にみられる青色の斑で、小学校に通う頃になると自然と消えていくと言われているものです。ちなみに黄色人種や黒人に多いとされる母斑になります。つまり異所性蒙古斑とは、お尻周囲の限定した蒙古斑ではなく、それ以外の部位(腕や背中など)でも出生時から認められる青色の母斑のことです。ただこの場合は、自然と消えないことも少なくありません。放置しても何ら問題はありませんが、見た目的なことで消したいということであれば治療となります。レーザー治療による施術となりますが、斑が消えるまで何度か通院していただくことになります。
茶あざ
茶あざに関しては、扁平母斑が挙げられます。
扁平母斑は、1歳頃までに発生することが多く、健常者でも1割程度の方にみられると言われています。これは真っ平で色調が統一された境界がはっきりした褐色の母斑で、手のひらや足の裏以外の部位で発症する可能性はあると言われています。形は円形や楕円形のほか、形が整っていない斑もあります。この場合、表皮の基底層からメラニンの増加が確認できるようになります。なお小児では、直径5mm以上で、多くの斑が確認できる場合は、神経線腫症1型のカフェ・オ・レ斑と診断されることもあるので、鑑別をしっかりする必要もあります。
放置でも体に悪影響が及ぶことはありません。そのため、治療はする場合は見た目を気にして行うということになります。内容については、主にレーザー治療で、複数回の照射が必要となりますので、通院することになります。なお、治療の効果については、人によって異なるほか、色調が元に戻ってしまうこともあります。
赤あざ
子どもによくみられる赤あざとしては、乳児血管腫(いちご状血管腫)や単純性血管腫が挙げられます。
乳児血管腫は、乳児期に発生する良性腫瘍で、未熟な毛細血管が増殖することで発生するというものです。生後数週間がピークとされ、発生部位は血管のある部位であればどこでも可能性は高いですが、顔面と腕(上肢)に起きやすいとされています。赤あざは丸みを感じる形で、直径にして1cm程度のものもあれば、10cm以上のものもありますし、単発の場合もあれば、複数、多数と発生することもあります。1歳をピークに色は時間をかけて薄くなっていき、小学校低学年までには自然と消えていくとされていますが、瘢痕が残ることが多いため、最近は積極的に治療が行われることが多いです。治療をする場合は、できるだけ早期のうちに薬物療法(β受容体遮断薬による内服)をしていくほか、色素レーザー治療などがあります。
単純性血管腫(毛細血管奇形)は、先天的な毛細血管形成異常によるもので、毛細血管の拡張によって、境界がはっきりした赤色の斑がみられます。主な発症部位は、頭頸部となります。なお血管は増殖しないので腫瘍ではなく、自然に消失することはないばかりか、年をとるにつれて色が濃くなる、肥厚化するなどすることがあります。治療をする場合は、色素レーザー治療となります。
水虫(足、爪)・たむし(足白癬・爪白癬・体部白癬)とは
カビの一種とされる白癬菌が主に足の皮膚に入り込むことで様々な皮膚症状が起きている状態を足白癬と言いますが、一般的にはこれを水虫と言います。なお白癬菌は、手や体、股の部分などにも感染し、発症することもあります。この場合、それぞれ、手白癬、体部白癬、股部白癬(いんきんたむし)と診断され、各々の治療が行われるようになります。
足白癬(水虫)については、主に3つのタイプ(趾間型、小水疱型、角質増殖型)に分類されます。趾間型は、足の指の間に発生する水虫で、患部に紅斑や水疱、皮がボロボロ剥けるなどの皮膚症状があるほか、かゆみもみられます。小水疱型は、小さな水疱などが足指の付け根、土踏まず、足の外側の部分等に多発し、これらが潰れるなどすると、やがて皮が剥けてカサカサした状態になります。この場合、水疱が発生すると同時くらいに強いかゆみの症状がみられます。最後の角質増殖型は極めて稀なケースで、足底の全ての部分で角質層が肥厚化している状態で鱗屑(皮がボロボロと剥け、皮膚はカサカサしている)もみられますが、かゆみや痛みなどの症状はありません。ただ、踵の部分に亀裂が入るなどすると痛みが出ることがあります。このほか、足白癬が足の爪の方まで感染すると爪白癬を併発することもあります。
感染経路については、不特定多数の方との足ふきマットやサンダルの使い回し、タオルなどの共有などが挙げられます。ちなみに足白癬は足の皮膚に白癬菌が付着したとしても24時間以内に洗い落とすことができれば感染しません。ただ足の裏に傷があるなどすれば、その半分程度の時間で感染するようになります。
患者様の症状や訴えなどから足白癬が疑われると、足の角質層の一部を採取し、それを顕微鏡で調べ、白癬菌の有無を確認していきます。治療が必要という場合は、主に抗真菌薬の外用薬を使用していくことになります。ただ角質増殖型では、薬が浸透しにくいので、抗真菌薬の内服となります。